ツロおよびスロ・フェニキヤとは現在のレバノンにある地。ツロに行かれた主イエスは、スロ・フェニキヤ生まれでギ
リシャ人の女から、小さな娘のいやしを求められた。その時主イエスは「まず子どもたちに十分食べさせるべきである」つまり「まずユダヤ人を救うために、自
分は来たのだ」と告げた。しかし彼女はひるまず「子犬でも子どもたちの落としたパンくずをいただきます」「外国人でもあなたの祝福のおこぼれをいただくこ
とができるのではないでしょうか」「あなたの恵みは、ユダヤ人にとどまってはいないでしょう。そこから満ちあふれ、こぼれ落ちた恵みに、私も加えていただ
きたいのです」と訴えた。
この論争に負けたのは、主イエスであった。律法学者、パリサイ人を論破してきた主イエスが、ただ一度負けた記事である。この女にみごとに負けてくださった主イエスの、限りない恵みを読みとることができる。
主イエスは、ツロだけではなく異邦人の地に何度も足を運び、復活後は世界宣教を命じられた。しかし主イエスご自身は、「エルサレムに行こうとして御顔を
まっすぐ向けられ」(ルカ9:51)、十字架を目指して歩み続けられた。十字架への歩みだけが、ユダヤ人にもギリシャ人にも「信じるすべての人にとって、
救いを得させる創造主の力」(ロマ1:16)だからである。
契約の民イスラエルが主イエスの福音を拒んだため、そのパンくずは、異邦人にあふれ出て、この日本にまで及んだ。私たちもパンくずの恵み、福音の祝福を頂くことができた。主イエスのあふれ出る恵みを感謝したい。